「舌を見せてください」から始める

問診腹診で、瘀血という座標が見えてきた患者さん。最後に「舌を見せてください」とお願いすると、舌の縁が暗く沈み、裏返してもらうと舌の下の静脈が太く浮き出ていました。腹診で拾った瘀血のサインが、舌でも同じ方向を指している――四診がそろって一点を指すと、は確かなものになります。

舌診脈診は、四診のうち慣れが要る二つです。熟達には時間がかかりますが、はじめの一歩は難しくありません。すべてを読もうとせず、婦人科で物を言うサインを一つ確実に拾う、というところから始めましょう。

舌診 ― まず色と、舌の裏

舌診では、大きく三つを見ます。

まずは「淡い/赤い」「舌の裏の静脈が目立つかどうか」の二点からで十分です。婦人科では、月経のたびに不調が強まる患者で舌下静脈の怒張を確かめられると、瘀血という座標に確信が持てます。舌は毎回同じ条件で見られるので、経過を追うのにも向いています。

脈診 ― 浮き沈みと、力の有無

脈診は、正直なところ習得に時間のかかる技術です。古典には多くの脈状が記されますが、初歩では欲張らず、次の二つの軸から入ります。

細かな脈状の読み分けは経験を積んでからで構いません。初歩では「浮いているか沈んでいるか」「力があるか弱いか」を感じ取れれば、それで十分に役立ちます。

舌・脈は、単独で決めない

強調しておきたいのは、舌も脈もそれ一つで証を決めるものではないということです。あくまで望・聞・問・腹診と重ねる補助線であり、四診がそろって同じ方向を指すことに意味があります。だからこそ、はじめは完璧を目指さず、「舌の裏の静脈で瘀血を一つ拾えた」で十分。その一歩が、証を確かめる手数を一つ増やしてくれます。

これで四診がひととおりそろいました。次回からは、方剤と生薬を安全に使うための約束事――甘草附子麻黄や、妊娠期の注意――を扱います。